本「人間失格 / 太宰治」の感想

内容

「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていました。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性に関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。「人間失格」はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を断つ。
いまは自分には、幸福も不幸もありません。
ただ、一さいは過ぎて行きます。

感想

裕福な家庭に生まれ、特に苦労もせず恵まれた環境に育ちながらも、
自分は異質だ、と心の中でもがき続ける主人公「葉蔵」。

異質感を隠す為、道化を演じ、空虚感を満たす為、女と交わり、
酒に溺れ、苦しみから解放されたく薬に依存していく。

最後は「人間失格」の烙印を押され、廃人となった「自分
「自分」が狂人になっていく始終が、
知人へ宛てた手紙という表現で綴られます。

誰もがもっている心の闇を捉えた、いわずと知れた名作です。

「恥の多い生涯を送ってきました。」
懺悔のような出だしから始まり、
人間の弱さや醜さが主人公「葉蔵」の視点から描かれた作品。

人の感情に敏感であるが為、人間不信に陥り、
人の世で生きていくには哀れともいえる不器用で繊細な主人公。

世間に順応しようと自分を殺し、一層不条理をかかえていく。

唯一の救いとなるはずであった妻ヨシ子も、
一人の心無い男の欲望によって、儚く崩されてしまう。

「神に問う。信頼は罪なりや。」
信じることにさえ裏切られ、頼るものは酒と薬となっていく。

「死にたい、いっそ、死にたい、」

心の叫びが誰にも届かず、抜け出したくても抜け出せぬ地獄の中、
狂人のレッテルを張られ、初めて人間として安息したのではないだろうか。

文中、一人称が「自分」であり、読み手自身に自分のことのように感じさせます。
これは、誰でも起こりうるということ。

最後に

生きていくという苦しみに葛藤したことがある者なら、
葉蔵の心の陰に共感することでしょう。

人間失格 (集英社文庫)
太宰 治
出版社: 集英社 (1990/11/20)
Kindle版 / 単行本 / 文庫 / CD
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1件のコメント

  1. 人間失格、最近映画になって話題になってますね。斗真くん効果って感じがしますがw
    人間失格って手をつけたことないですよね。クラシックな小説ってそういえばあまりよんだことないなぁ。そのうち読んでみたいな。

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  2. 太宰治は、生誕100周年ということで注目されていたので、再読したのは映画からではないんですが、
    こういったことで、名作に注目されて、また良さが広がるのはいいことですよね!

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